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体で感じる・心が育つ
こどもに関するコラム集!専門家がコラム・情報を掲載しています。
 
No.189 友達は運、友情は面積という方程式
原 田 京 子 ( 児童文学作家 )
「クラスメートと仲良くする必要はない」、そんな見出しに思わずその記事を開いてみました。いつも愛読しているプレシデントオンラインを読んでいたときのことです。私も、2013年5月に、『それでもママ友は必要ですか?』というタイトルでコラムを書いたことがあり、共感のようなものを感じてその記事を読みました。
「仲良くすること」を良しとする風潮があるように思える日本社会で、あえて仲良くする必要がない、そう主張するのにはそれなりの理由があります。つまりは仲良くすることに何の意味もない、得られるものもないと感じられる関係なら、あえて仲良くする必要がない、そんなきわめてシンプルな理由です。私がコラムの中でしばしば述べているように、「存在価値のない人間はいないけれども、存在価値のない人間関係」は存在するのです。
 現在のようにSNSによって人間関係に関する記事が溢れるように発信され、人間関係に悩む人々に向けて、実にたくさんの人がアドバイスを提供しています。そのほとんどが「自分にとってプラスとならない人間関係からは逃げてもいい」といっていますが、おそらくそれはマイナスの人間関係から逃げられないためにたくさんの人が悩んでいるという事実が存在するからでしょう。「逃げてもいい」という感覚はある意味とても必要だと思います。
 さて、この記事を書いた山本康正氏(企業投資家)は子どもたちにこう問いかけます。「きみはなぜ毎日学校に行っているのだろう?」と。そして、「学校に行く理由」を細かく分解していくと、「学校でなければ絶対にできないこと」は意外とないことに気づくはずだという結論に達するのです。学校以外に学びの場所はたくさんあるからです。そうなってくると、大切なことは何なのか?
 山本氏は再び問います。「きみは自分に自信があるかな?」と。
『自己肯定感を高め、自分に自信を持つには?』というタイトルで、2022年7月のコラムでも述べているように、日本人は外国人に比べて自己肯定感が低い国民のようです。とくに日本の十代は自己肯定感が他国の十代に比べて低いという調査結果も出ています。
「自分に自信がない」「自分はバカだ」と思うことで、結果がだめだったときの言い訳を用意している、と山本氏はいっています。そして、そう思い込むことによって自分の可能性を塞いでしまうくらいなら、自信の根拠なんかなくても「自分ならできる、大丈夫」と信じて行動してみたほうが必ず道は開けるというのです。失敗を恐れてはいけない。失敗をしたことのない人などいない。もしいるとしたら、それは自分の能力を超えた挑戦をしていないからだということです。そして、自信は天から降ってくるものではなく、自分で育てるものだというのです。たくさん挑戦し、たくさん失敗する。その失敗から学ぶことは多いし、行動しなかったことの後悔のほうが大きいということです。
 さて、今月のコラムのタイトル『友達は運、友情は面積という方程式』の解説に入ります。「クラスメートと仲良くする必要なない」。なぜならクラスメートとは同じ年、同じエリアに生まれたメンバーが集められただけ。気の合うメンバーに出会えたら運が良かったというだけのこと。出会えなかったからといって、自分のコミュニケーション力が足りなくて交友関係が持てなかったというわけではないのです。クラスという場所にいなければ、別の場所に気の合うメンバーを探せばいいだけのことなのです。山本氏いわく、
友情 = 友達と思える人の数 × 心を許せる深さ
という方程式。
 浅い関係だけの友人が何人いてもそこまでの価値はない。でも深く付き合える友人が数人いたら友情という面積の総量は増える、そういうことなのです。
 さて、話はガラリと変わります。今度は旅の話題です。
 9月の終わりから10月の始めにかけて9泊10日の旅をしてきました。北海道十勝に4泊、栃木県に3泊、東京に2泊の旅です。北海道は息子の住む帯広に行ってきました。
 北海道は広い、大きい、そんな思いの連続でした。その土地に根付いて、しっかりと生きている息子を見て、親として感慨深いものがありました。息子は友達も世界中にいて、その数も多く、しかも、心を許せる深さも深いので、先ほどの「友情の方程式」にあてはめると、「友情」は無限大に等しいものに思えました。子どものころから野生児で育ちましたが、北海道という広大な場所は、そんな息子にぴったりの場所のようで、この地でたくさんの人に会い、豊かな自然に育てられて、息子はこれまでの何倍も人間としてでっかくなったようでした。
 栃木では自然豊かな鬼怒川温泉に宿泊し、また、東京では新宿の高層ビル群の中での宿泊と、実に対照的な環境下での滞在でしたが、何の予定も立てずにゆっくりと過ごすことができました。旅の計画を立てたときは、老夫婦二人でどうなることやらと想像もつきませんでしたが、旅を終えてみると、本当に行ってよかったと思える10日間でした。旅行中の荷物はかなりの量でしたが、足の悪い私のために、夫が全て運んでくれました。また、私の歩ける距離が限られているので、空港など行く先々で車椅子を借りてくれ、特に東京ではホテルから新宿御苑まで歩いて1時間程の距離を車椅子を押して連れて行ってくれました。
「ぼくはまるで荷物を運ぶシェルパとヘルパーを兼ねているみたいだね」
と夫がいうので、私は夫を「ヘルシェルパ」というと、夫が「それでは地獄(ヘル)のシェルパだね」と笑って答えました。まさに老夫婦の珍道中でした。
 マッスルゲートも今回の旅行も、失敗を恐れて挑戦しないよりも、未知のことに挑戦するほうが後悔がないということを身をもって証明したようでした。そして、結婚して40年以上経っても、優しく、思いやりに溢れた夫。そして、たくましく生きている息子。そんな素晴らしい家族の存在の大切さを再認識した旅でした。
 体のほうは、「マッスルゲート」と「旅」を終えてあちこちがガタガタですが、今また別の大きな目標に挑戦している私です。このように未知のことに挑戦するという経験を重ねていくことが「自分に自信がある」といえる「自信の元」を作っているのだと自信を持っていうことができる私なのです。
2023-11-01 更新
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著者プロフィール
原田 京子(はらだ きょうこ)
1956年宮崎県生まれ
大学院修士課程修了(教育心理学専攻)

【著書】
児童文学
『麦原博士の犬語辞典』(岩崎書店)
『麦原博士とボスザル・ソロモン』(岩崎書店)
『アイコはとびたつ』(共著・国土社)
『聖徳太子末裔伝』(文芸社ビジュアルアート)
エッセー
『晴れた日には』(共著・日本文学館)
小説
『プラトニック・ラブレター』(ペンネーム彩木瑠璃・文芸社)
『ちゃんとここにいるよ』(ペンネーム彩木瑠璃・文芸社)
『タイム・イン・ロック』(2014 みやざきの文学「第17回みやざき文学賞」作品集)
『究極の片思い』(2015 みやざきの文学「第18回みやざき文学賞」作品集)
『ソラリアン・ブルー絵の具工房』(2016 みやざきの文学「第19回みやざき文学賞」作品集)
『おひさまがくれた色』(2017みやざきの文学「第20回みやざき文学賞」作品集)
『HINATA Lady』(2018みやざきの文学「第21回みやざき文学賞」作品集)
『四季通り路地裏古書店』(2019みやざきの文学「第22回みやざき文学賞」作品集)




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