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体で感じる・心が育つ
こどもに関するコラム集!専門家がコラム・情報を掲載しています。
 
No.170 加古里子さんからの遺言
原 田 京 子 ( 児童文学作家 )
 先日、耳鼻咽喉科でアレルギーの治療を受けた後、調剤薬局へ薬を取りに行ったときの出来事です。私の前に診察を受けた親子が薬を待っていました。幼稚園に入園前くらいの男の子で絵本を声に出して読んでいます。私が「上手ねえ」というと、お母さんが、「この子は本を読むのが得意なんですよ」と教えてくれました。
 私は薬を待っている間、男の子が本を読むのを、絵本を覗き込みながら聞いていました。男の子は、時々、私の方を見ながら本を読み進めていきます。そのうちに、名前を呼ばれて、男の子のお母さんが薬をもらいに行きました。そして、そのあと、「さあ、帰ろうか」と男の子に声をかけました。
 男の子は、まだ本を読み続けています。お母さんは、男の子が読み終わるのを待つことにしたようでした。そのうちに、私の名前が呼ばれました。そして、男の子も本を読み終わりました。
 私はそのとき気がついたのです。男の子は私のために最後まで本を読んでくれていたのだと。私は立ち上がると、男の子に向かって、「どうもありがとう。とっても上手に読んでくれたので、嬉しかった」といいました。男の子は、にっこりと笑うと、お母さんといっしょに帰っていったのでした。
 この男の子のお母さんは、とても素晴らしい子育てをしているなあと思いました。私が「上手ねえ」と男の子を褒めたとき、お母さんは「この子は本を読むのが得意なんですよ」といいました。きっと、男の子はそのお母さんの言葉を聞いて、嬉しかったに違いありません。だからこそ、お話を聞いている私のために、最後まで本を読んでくれたのです。お話の最後がどうなるのか私が知りたがっているに違いないと思ったからです。
 自分のことだけではなく、相手のことを思いやり、相手を幸せにする。そんな行為ができるのは、ひとえに日ごろのお母さんの子育ての賜物でしょう。そんな素敵な子育ての恩恵を、見ず知らずの私が受け取ることができるなんて、本当に幸せなことです。男の子の優しい気持ちが伝わってきて、その日は1日ずっといい気分で過ごしました。

 さて、私は街を歩いている時、幼い子どもたちに自然と目が行きます。かつて幼な子の母親であり、そしてこれから孫を持つ、そんな気持ちからなのか、幼い子どもたちが愛おしくて仕方がありません。「かわいいねえ」そう声をかけると、本当に嬉しそうに頷く子どもたち。ときにはハイタッチをしてくれます。そして、そのキラキラと輝く瞳に、目には見えぬ無限の可能性を感じるのです。

 そんなとき、私の心にいつも響く言葉があります。「子どもさんを侮るな」。絵本作家の加古里子さんの言葉です。子どもたちが幸せになれるような絵本を作りたい、それを生涯の夢としている私にとって、加古さんからの遺言として心に留めている言葉です。
 二十年以上前、宮崎に講演にいらっしゃった折に、主催者のご好意でいっしょにお食事をする機会がありました。
「どうしたら先生のように、子どもたちがワクワクするような絵本が作れるでしょうか?」、私はそんな質問をしました。
「好奇心のアンテナをいつもはりめぐらしていること」。加古さんはそう答えてくださいました。とても優しいまなざしの、永遠の少年のような方でした。
 92歳になってなお、死の直前まで原稿を書き続けていた加古さん。左目の視力を失い、右の目も視野がほとんどなくなりながら、そして、腎臓の持病と戦いながら、子どもたちにメッセージを届けたくて、その生涯の最後まで絵本を書き続けていた加古さん。
 加古さんの絵本は、子どもって、大人が考えないような、こんなところにまで興味をもつんだろうなあ、思わず子どもの心の世界を垣間見ることができたような気持ちにさせる絵本ばかりです。そんな宝物のような絵本に出会えることの大切さを、子育てが終わった今もひしひしと感じています。

 大人になったら忘れてしまうのだろうなあ、あらためてそう思うのは、子どもの頃にしかできないような数少ない経験です。それは、チョコレート色の水溜りにどっぷりとつかって、パンツが醤油で煮しめたような色になるのが楽しくてたまらないこととか、だんご虫をつつくとくるくるとまるまって、そのかたまりをたくさん集めて宝物のようにポケットに大切にしまっていることとか。大人が顔をしかめてしまうようなことが、子どもにとっては、楽しくてたまらないことなのだということを。そんな経験のひとつひとつが、かつて子どもだった自分がとても幸せだったのだとあらためて思える「子どもの頃の思い出」という、美しい記憶だということを。
 どんなにやんちゃなことをしようと、「もう二度とやってはいけません」などと野暮なことはいわれませんでした。自然という大きな懐に抱かれて、裸足で走り回ったり、草むらを転げまわったり、木登りをしたり、そんなことが子どもにとっていかに大切なことであるかを、大人たちは知っていたのです。だから、「まったくもう」とかいわれながらも、水溜りに向かって走っていくことを容認されている子どもたちを見ると、ああ、この子達は幸せだなあ、そう思います。お母さんたち自身が子どもの頃にそんな経験をしたからこそ、それがわかるのです。

 かつて子どもだった私に、そのことを忘れそうになる私の心に「子どもさんを侮るな」そんな加古さんからの遺言は響きます。
「大人になったあなたには見えない世界の中で、子どもたちは毎日をいきいきと生きているのですよ。だからね、子どもたちのようにいつも好奇心のアンテナを張り巡らして」。加古さんは、遠い空のかなたから、私にそう教えてくれているのです。

※今月の写真は、最近見かけた花達です。
2022-04-01 更新
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著者プロフィール
原田 京子(はらだ きょうこ)
1956年宮崎県生まれ
大学院修士課程修了(教育心理学専攻)

【著書】
児童文学
『麦原博士の犬語辞典』(岩崎書店)
『麦原博士とボスザル・ソロモン』(岩崎書店)
『アイコはとびたつ』(共著・国土社)
『聖徳太子末裔伝』(文芸社ビジュアルアート)
エッセー
『晴れた日には』(共著・日本文学館)
小説
『プラトニック・ラブレター』(ペンネーム彩木瑠璃・文芸社)
『ちゃんとここにいるよ』(ペンネーム彩木瑠璃・文芸社)
『タイム・イン・ロック』(2014 みやざきの文学「第17回みやざき文学賞」作品集)
『究極の片思い』(2015 みやざきの文学「第18回みやざき文学賞」作品集)
『ソラリアン・ブルー絵の具工房』(2016 みやざきの文学「第19回みやざき文学賞」作品集)
『おひさまがくれた色』(2017みやざきの文学「第20回みやざき文学賞」作品集)
『HINATA Lady』(2018みやざきの文学「第21回みやざき文学賞」作品集)
『四季通り路地裏古書店』(2019みやざきの文学「第22回みやざき文学賞」作品集)




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