ミテンの本棚 > 宮崎、歴史こぼれ話 | ||||||
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前回「ある山伏の日常」で修験者は加持祈祷や呪い等で明け暮れたことを紹介したが、修験者たちは加持や祈祷の後、呪符を与え田畑に立てさせたり家屋に貼ったり又は呑ませたりした。 鏡学院の子孫須田家に「愛染王百符」が伝わっている。蓬莱山上之坊8世南学院が天保5年に写したものを上之坊10世福泉院が書写したもので、祈祷などの後に与える凡そ100通りの呪文札事例集である。 例を挙げると、 ・人の眼病に呑む ・虫歯が痛むとき呑む ・母親の乳が出ないとき呑む ・疫病(伝染病)の祓い符 ・難産のとき用いるとよい ・悪霊除き符 この他に生霊が憑いたとき、悪霊が憑いたとき、死霊が憑いたときの呪符、ネズミが騒ぐとき、キツネが鳴くときなどの呪符もある。男女敬愛符、女ノ男ヲニクム時守などの呪符もあった。 梵字や□の中に天の字を書いたり、鬼や意味不明文字か符号を書いたりし、さらにそれらの下方に「急々如律令」の文字、急の文字は口偏が付けてあり何となくおどろおどろしい。 急々如律令 呪符には「急々如律令」の文字がある。「急々律令の如し」と読むのか。これを『修験道辞典』でみると、「悪魔降伏のための呪文。本来道教のものであるが、修験道でも多くの符に記されて広く用いられた。その意味は字義に従えば、律令を施行するように符の効果が速いことを示している」。しかし『修験檀問愚答集』では、「悪魔を防禦、教戒し降伏する意味を持つとされている」という。 つまり、病を治すとか狐や犬など物憑きを追い払う呪い、呪文である。 これと同様のものが宮崎市金崎や同市田野の江戸時代修験であった家にも残っている。冊子の題はどちらも「不動百符」、内容は「愛染王百符」と殆ど同じである。 奈良県橿原市、桜井市などでは屋根瓦に「急々如律令」を陽刻し、家内に災いが入って来ないようにしているという。(『「急々如律令」を探る』前田良一) |
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2013-01-09 更新 | ||||||
著者プロフィール | ||||||
前田 博仁(まえだ ひろひと) 1942年宮崎市生まれ 宮崎大学学芸学部卒 県内小学校、宮崎県総合博物館、県文化課、県立図書館、宮崎市生目台西小学校校長等歴任、定年退職後きよたけ歴史館館長 現在、宮崎県民俗学会副会長、清武町史執筆員、県伝統工芸審議会委員 【著書】 『鵜戸まいりの道』(私家版) 『歩く感じる江戸時代 飫肥街道』(鉱脈社) 『近世日向の仏師たち』(鉱脈社) 『薩摩かくれ念仏と日向』(鉱脈社) 【共著】 『宮崎県史 民俗編』 『日之影町史 民俗編』 『北浦町史』 『日向市史』 『角川日本地名大辞典 宮崎県』(角川書店) 『郷土歴史大事典 宮崎県の地名』(平凡社) |
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