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宮崎、歴史こぼれ話
科学技術の発展を別にすれば、武士や庶民の生き方考え方などは現代と同じ。民俗的視点から学校の歴史学習では習わない当時の人々の生活を紹介します。
 
No.187 賀来飛霞の高千穂採薬記5
前 田 博 仁 ( 宮崎民俗学会会長 )
師走祭り
 神門村大庄屋宅ニ昼休ス、(略)神社アリ鳥居三四ツモアリ、宮殿モ壮麗ナリ、社僧モアリ、神ノ林モ広大也、相伝フ此神元ト漢土ノ帝王ノ彼国ノ乱ヲ避テ来リ玉ヒシト、又高鍋領内ニ此神ノ御子タル神ノ在ストテ、十二月祭祀ノトキ彼領ヨリ神輿ニテ此地ニ行幸アリテ遠近ノ村々ヨリ群集シ、歳晩ノ買物ヲ出シ又各地ノ産物ヲ交易スルトイフ、土人ハ此神ヲ鈍太郎様(ハン)ト称シ又神門神ト称ス、未タ其実ヲ知ラス
 4月4日神門村の大庄屋宅で昼休みする。神社あり、鳥居が3、4つもあり、宮殿も壮麗なり、社僧も居て境内も広大なり。相伝う、神門神はもと漢土(朝鮮半島の百済国)の帝王で漢土の国の乱を避けて来られたと。また高鍋領内に神門神の子にあたる神があり、12月祭祀のとき高鍋より神輿でこの地(神門)に行幸する。近郷近在より村人が群集し、歳の晩の買い物をし、各地の産物を交易するという。地元の人はこの神を鈍太郎様、または神門神と称す。未だ本当のことが分からない。
 師走祭りは比木神社祭神福智王が90kmほど離れた神門神社祭神父禎嘉王を訪問するもので、昔は徒歩であったため9泊10日であったが、現在は2泊3日になっている。
百済王族伝説
 比木神社に百済王族伝説が伝わる。朝鮮半島百済国に内乱が生じ、禎嘉王や福智王一族は、天平勝宝八年(七五六)九月日本に亡命、二年後に安芸国より日向国に逃れるが悪天候に遭遇、父禎嘉王は細島海浜(日向市)に上陸して神門郷(美郷町)に隠れ住み、息子の福智王は高鍋浜に漂着、それより高城(木城町)の比木に定住した。
 ところが百済国の叛乱軍がこれを知って兵を差向けた。禎嘉王は神門(美郷町)の土豪益見太郎の援をうけて戦うが坪谷伊佐賀の坂で敗れた。そこへ比木から来た福智王の援軍が着到し、近郷住民の加勢もあり敵を全滅することが出来た。しかし父禎嘉王は流れ矢に当たって死に神門大明神に祀った。福智王は母后と共に比木に還り天寿を完うし、母后の霊は高鍋上江の大年大明神に、王と王妃は比木大明神に奉祀されたと伝える。(『宮崎県近世社会経済史(百済王伝説)』)
 寛政4年(1792)閏2月、尊王家高山彦九郎が比木を訪れている。
「十二日、比木村に入る、石鳥井社南向キ比木大明神百済国福智王を祀る、百済ヨリ此所へ隠れまし墓も有り、(略)福智王子の父ハ延岡城下ヨリ西六七里きじのミかど(鬼神野神門)に祀りて有り、毎年極月に至りて鉾と太刀ときじのミかどへ渡りて申酉ノ日祭りありて帰へらる、父へ省するの意なるよし」
「閏二月十九日、(略)神門大明神拝殿宮殿巳午ノ間に向ふ、杉ノ大木多フし、十二宮大明神とも称す、極月申酉の日祭礼比木大明神の親神にて、比木の神卯ノ日に発駕、美々津通行未の日に爰に神体鉾渡らせ玉ふ」(『筑紫日記』)
小寺鉄之助著『宮崎県近世社会経済史(百済王伝説)』宮崎県史料編纂会
千々和 實編『高山彦九郎全集 第四巻日記編』高山彦九郎遺稿刊行会発行
2025-11-25 更新
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著者プロフィール
前田 博仁(まえだ ひろひと) 
昭和40年宮崎大卒。県内小学校、県総合博物館、県文化課、県立図書館を歴任、
平成15年宮崎市立生目台西小学校校長定年退職。
現在、宮崎民俗学会会長
(県)みやざきの神楽魅力発信委員会顧問、(県)伝統工芸品専門委員、
高鍋神楽記録作成調査委員会参与、日南市文化財審議会委員

著書
『近世日向の仏師たち』(鉱脈社)
『薩摩かくれ念仏と日向』(鉱脈社)
『近世日向の修験道』(鉱脈社)、
『比木神楽』(鉱脈社)、
『神楽のこころを舞いつぐ』(鉱脈社)、
他に『鵜戸まいりの道』
『飫肥街道』(鉱脈社)

共著
『宮崎県史 民俗編』
『日之影町史(民俗)』
『北浦町史(民俗)』
『日向市史(民俗)』
『清武町史(民俗)』
『みやざきの神楽ガイド』
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